身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子
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2010年4月―NO.89

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元祖・インスタントラーメンは、青春の下宿屋の味がする。
日清食品の「チキンラーメン」


日清食品の「チキンラーメン」
日清食品の「チキンラーメン」
(画:森下典子)

 去る3月5日は「インスタントラーメンの父」と言われる日清食品の創業者、安藤百福さんの生誕百年の日だった。いくつかのテレビ番組で安藤さんの業績が紹介されていた。
 安藤さんは昭和33年に世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を、昭和46年には世界初のカップ麺「カップヌードル」を発明した人で、アメリカでは「ミスターヌードル」として尊敬されているそうだが、私はその偉大なる発明者の名前を今まで知らなかった。
「百(もも)福(ふく)」という世にも幸せな名前にもかかわらず、安藤さんの前半生は紆余曲折の連続だったそうだ。インスタントラーメン発明の裏には、敗戦後、梅田の駅裏で見た寒風に震えながら屋台に並ぶ長い行列の原風景があったという。
「おいしく、保存が利き、すぐにできる、安くて安全な麺ができないか」
 昭和32年、48歳の時、自宅の裏の作業小屋にこもり、どうやったらお湯をかけただけで食べられるラーメンができるか、連日、研究を続けた安藤さんは、ある時、奥さんが天ぷらを揚げているのを見て、
「油で麺を揚げれば、水分がとんで保存性がよくなるのではないか」
  と思いつき、その閃きをヒントに実験を繰り返し、試行錯誤の末に「チキンラーメン」を発明した。その研究小屋が大阪の「インスタントラーメン発明記念館」に復元されている。6畳ほどの狭い小屋の中に、まな板、麺棒、中華鍋など、どこの家庭にもあるような台所道具が並んでいる。ここから世界的な発明が生まれたのである……。

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