身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子
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2007年5月―NO.55

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これ以上引くものがないほど引き算をした麺である
あえて究極の引き算で勝負したのには、
厳選した素材への自信と、強いポリシーが感じられる

雲仙きのこ本舗の「養々麺」


袋に入っていた「京七味」
袋に入っていた「京七味」
(画:森下典子)

 袋を破くと中から、まず乾燥麺が現れた。その麺を一目見て、
「おーっ!」
 と、期待が高まった。チリチリの超極細である。ビーフンのような白っぽい半透明の麺が、いかにも繊細で、麺好きの心をくすぐる。
 この麺と、乾燥したネギとワカメのかやくをどんぶりに入れ、沸騰したお湯を注いで蓋をする……。
 即席ものの麺ができるのを待つ3分というのは、たった3分なのにどうしてこんなに待ち遠しいのだろう?私はいつも途中で、
「まだかな、まだかな〜?」
 と、蓋をちょっと持ち上げて、乾燥麺が麺になる途中経過を眺めたりする。
 半透明の極細麺は、熱湯の中で徐々に白くなり、2分半くらいで乾燥のこわばりが取れてしなやかにそよぐ素麺になった。
「よーし!」
 特製つゆを入れてよく混ぜ、きのこの具材を載せて、本当に3分でできあがった。かすかな醤油色の汁の中に、白く繊細な素麺が浸り、えのき、椎茸などの具と、ネギ、ワカメが載っている。
  そこに、袋の中に入っていた「京七味」を、さらさらと振りかけた。すると、たちまち、ふわ〜っと七味の香りが立ち上り、湯気に豊かな風情が加わった。

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