身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子
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2005年8月―NO.34
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ん〜、「すぐき」と茶漬けはよく似合う
土井志ば漬本舗の「すぐききざみ」


「すぐき」と茶漬け
「すぐき」と茶漬け
(画:森下典子)

 さて、日本には、地方ごとに、バリエーション豊かな漬け物がたくさんあるが、中でも私が好きなのは、たとえば、北海道の「はさみ漬け」である。キャベツや白菜の葉、大根の薄切りなどを、フランス菓子のミルフィーユのように重ね、その間に、生の紅鮭の薄切りを挟んで箱に入れ、昆布と糀で漬けたもので、これ一品だけで、もう立派なご馳走だ。
「いぶりがっこ」は、「秋田の至宝」と言ってもいい名産である。「いぶり」は「燻製した」という意味、「がっこ」は「たくあん」のことで、つまり「燻製したたくあん」だ。天井に吊るし、囲炉裏の煙で燻した大根を使ったたくあんで、表面は黒ずみ、シワが寄っているが、中は黄色だ。これを薄くスライスしてポリポリ齧ると、ぷーんと芳しいスモークの匂いが鼻に抜け、思わず気が遠くなる。
 新潟出身の友達が持ってきてくれた「にしんの糀漬け」も絶品だった。ぶつ切りにした身欠きにしんと、大根、キュウリ、人参、キャベツなどを、甘酒で漬けたもので、糀に漬かった身欠きにしんは、噛めば噛むほど味が出る。箸が止まらなくなって、ついに胃を悪くした。
 友達のお父さんから時々頂戴するお手製の「白菜漬け」も素晴らしい。ニンニクと唐辛子がきいている。それが、古漬けになって、白菜の葉がババくさいくすんだ色に変色し、酸味も出て、ちょっとヤバくなりかけている。これに、少し醤油をたらして食べると、あまりのうまさに耐え切れず、思わず、痛みをこらえるように顔をしかめる。
 ……おいしい漬け物について語れば、とてもこの欄だけでは書ききれない。が、毎年、夏の暑い盛りに、お茶漬けに乗せて食べると、元気になる漬け物がある。
「すぐき」である。
「すぐき」は、京都の漬け物。かぶらに似た京都の伝統野菜「すぐき菜」を発酵・熟成させたもので、まろやかな酸味があり、味も濃厚だ。
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