身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子
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2010年7月―NO.92

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どうしても忘れられない「皿うどん」がある。
蘇州林の「皿うどん」


蘇州林の「皿うどん」
蘇州林の「皿うどん」
(画:森下典子)

 毎週日曜日、「龍馬伝」を見て燃えている。今回の大河ドラマには、今までの時代劇とは全く違うリアリズムがあって、登場人物たちを自分たちと同じ生身の人間だと感じるので、つい感情移入し、熱くなってしまう。
 先日は「蛤御門の変」で焼かれた京都の町を龍馬が歩いていた。調べてみたら蛤御門の変は1864年。東京オリンピックのちょうど100年前ではないか……!50歳を過ぎて、自分の人生という「ものさし」の尺が長くなってきたせいだろう。100年なんて、私が生まれてから今日までの時間「×2」だと考えると「ほんのちょっと前」だと思える。
  東京オリンピックの年、私は小学校2年生で、学校のテレビで世界中から選手団が集まった開会式を見て興奮したけれど、そのたった100年前、日本はまだ幕藩体制で、坂本龍馬も桂小五郎も西郷隆盛も生きていて、京都の街では「人斬り以蔵」なんかが暗躍していたのである。「人斬り以蔵」から「東京オリンピック」まで、たった100年……。そう思うと、日本がいかにすさまじい勢いで変貌し、近代化したかに目も眩むばかりだ。

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