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![]() 身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子 |
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2004年9月―NO.24 | |||||
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サツマイモの味には、上品ぶったところが全然ない。その自然で、気取りのない味が、なんだか体にも心にも、優しく馴染む気がする。それは、何もかもすべてを丸ごと受け入れられた幸せに似ていた。 私は、その日、畳にドテッと寝転んだような落ち着きと安心を覚え、そして、目からウロコが落ちた。子供の頃、どうしてこのおいしさがわからなかったのだろう。 「やっぱり、舟和の芋ようかんは、うまい」 気がついたら、父と全く同じことを口走っていた……。 それ以後、私は「舟和の芋ようかん」を、ちょくちょく買うようになった。 食後に、「舟和の芋ようかん」が待っていると思うと、夕食が華やいで見える。食卓をきれいに片付けたら、丁寧にお茶を入れ、芋ようかんを「拍子木」のまま、皿に乗せ、あとは、幸福をかみしめる……。 先日、近所の公園を歩いていたら、土手に真っ赤な彼岸花が咲いていた。 「あ、もうお彼岸なのか」 うちでは、お彼岸になると、父の仏壇に「おはぎ」ではなく、「舟和の芋ようかん」を供えている。 | |||||
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