身近な生活の中のおいしさあれこれを1ヶ月に1度お届けします 森下典子
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2004年9月―NO.24
  3

その自然で、気取りのない味が
なんだか体にも心にも優しく馴染む気がする

舟和の「芋ようかん」


さつま芋
さつま芋
(画:森下典子)

 なんでも、「舟和の芋ようかん」は、サツマイモを1本1本、手で皮をむいて、添加物は一切使わず、サツマイモと砂糖で作っているという。
 サツマイモの味には、上品ぶったところが全然ない。その自然で、気取りのない味が、なんだか体にも心にも、優しく馴染む気がする。それは、何もかもすべてを丸ごと受け入れられた幸せに似ていた。
 私は、その日、畳にドテッと寝転んだような落ち着きと安心を覚え、そして、目からウロコが落ちた。子供の頃、どうしてこのおいしさがわからなかったのだろう。
「やっぱり、舟和の芋ようかんは、うまい」
 気がついたら、父と全く同じことを口走っていた……。
 それ以後、私は「舟和の芋ようかん」を、ちょくちょく買うようになった。
 食後に、「舟和の芋ようかん」が待っていると思うと、夕食が華やいで見える。食卓をきれいに片付けたら、丁寧にお茶を入れ、芋ようかんを「拍子木」のまま、皿に乗せ、あとは、幸福をかみしめる……。
 先日、近所の公園を歩いていたら、土手に真っ赤な彼岸花が咲いていた。
「あ、もうお彼岸なのか」
 うちでは、お彼岸になると、父の仏壇に「おはぎ」ではなく、「舟和の芋ようかん」を供えている。
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